ドストエフスキイ研究会便り(21)
今回の「研究会便り (21)」の内容は以下の通りです。
《講演・研究発表の原稿化》
★「ドストエフスキイ研究会便り」では第15回目から、
かつての講演や発表を原稿化し,掲載しています。
今回は7年前の講演、
「アリョーシャとイワンの聖書 ― モスクワ時代、イエス像構成の一断面 ―」の記録を
再掲載します(於早稲田大学、2014年12月20日)。
この講演の趣旨については当日配布したプリントに記してあり、
これを今回は巻末に付しておきましたのでご覧下さい。
★この講演では、
ドストエフスキイが遺作『カラマーゾフの兄弟』に於いて、
主人公アリョーシャとイワン兄弟の「成長史」を描くにあたり、
二人を如何に深く聖書と関わらせ、
イエスと向き合わせたかを具体的な例を挙げて示すように努めました。
★今回は「付加的説明欄」を大幅に加筆・修正し、
殊に聖書学が歴史的イエス像を探究するにあたって用いる基本的な方法について、
前回より詳しい説明を試みました。
★しかし「付加的説明欄」では扱い切れず、
巻末に「付説」を設けて更に考察を試みました。
このことでドストエフスキイの思索と創作が、
現代の聖書学が進めるイエス像と初期キリスト教会生成のメカニズム探究の作業と
強く響き合うものであることを改めて確認出来たように思います。
またドストエフスキイとマルコの二人が、
遠く時空を隔てながらも、人間がその内深くに宿す原罪性、「聖なるもの」を厭い斥けるユダ的悪魔性を
正面から凝視し、徹底的に思索し、そして独自な形で表現した人たちであることも、
ある程度浮き彫りに出来たように思います。
★なおこのような、人間に関する基礎的で重層的な学びと思索の姿勢が、
「ドストエフスキイ研究会」が四十年近くにわたり、
若者たちに身に着けて貰おうとしてきたものであることも、
ここに改めて記しておきたいと思います。
詳しくはこちらをご覧ください。
「研究会」→ドストエフスキイ研究会