カラマーゾフの兄弟論 砕かれし魂の記録
新刊紹介
カラマーゾフの兄弟論 砕かれし魂の記録
著者 芦川進一
発行 河合文化教育研究所
発売 (株)河合出版
2016年4月刊行
A5版 4500円+税
目次
はじめに
前篇
Ⅰ リーザの嵐
1 ドアで指をつぶす少女
2 嵐の背景
Ⅱ リーザとアリョーシャとの対話(1)
Ⅲ モスクワと家畜追込町
1 モスクワの黄金時代
2 アリョーシャ、イエスの呼び声
3 アリョーシャの帰郷
4 ホフラコワ夫人、そのニヒリズム
5 ゾシマ長老、「実行的な愛」
Ⅳ 「神と不死」の問題と福音書
1 ヨハネ福音書
2 ルカ福音書とフョードルの道化
3 悪魔の系譜、フョードルからイワンへ
4 「永遠の生命」への問い
Ⅴ イワン
1 イワンの帰郷、二つの「仕事」
2 イワンとアリョーシャ、「反逆」の思想
3 悪魔が明かすモスクワのイワン、「否定」の精神
4 「否定」の精神、没落への意志
5 イワンとゾシマ長老、「否定」から「肯定」へ
Ⅵ ナドルィフ「(激情の奔出)
後篇
Ⅶ 二つの死
二つの死がもたらすもの
A アリョーシャ
1 アリョーシヤの絶望
2 グルーシェニカの許で
3 アリョーシャの宗教体験、その罪意識
B イワン
1 イワンの「悪業への懲罰」
2 リーザの手紙とイワン
C スメルジャコフ
1 スメルジャコフの悲劇性と悪魔性
2 スメルジャコフの「悪業への懲罰」
3 「活ける神」の現前
4 新たな悲劇、兄弟殺し
5 スメルジャコフの罪
6 スメルジャコフへの鎮魂歌
D ドミートリイ
1 その光と闇
2 「第一の告白」、カラマーゾフの二つの血
3 「第二の告白」、カチェリーナペの愛
4 「第三の告白」、グルーシェニカへの愛
5 モークロエの「狂宴」
6 新たな道へ
Ⅷ (終章)リーザとアリョーシャとの対話(2)
1 リーザの嵐の開示
2 アリョーシャの「誠意」
3 更なる道程
補遺『シリアの聖イサクの苦行説教集』より
参考文献・註
おわりに
著書の内容
「死と再生」の究極のドラマに光をあてる
生涯をかけて新約聖書のイエスと向き合い続けてきたドストエフスキイという作家の思想の独自性に着目した著者が、彼の作品がもつ「聖と俗」の二重構造を鮮やかに開きながら、満を持して著わした画期的な『カラマーゾフの兄弟』論。ゾシマ長老と兄弟の父フョードルの二つの死を軸に展開される人間の愛と葛藤、罪と裁き、そして没落と甦りを、新約聖書の「一粒の麦」と「ゲラサの豚群」の二つに焦点を絞りつつ考察し、自らの内面に思考の錘鉛を下ろしながら、作品の底を流れる「死と再生」の物語を浮き彫りにしていった希有な作品論。
本体4500円+税