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ドストエフスキイ研究会便り(25)

 

 今回の「研究会便り (25)」の内容は以下の通りです。

 







《講演・研究発表の原稿化》

★「ドストエフスキイ研究会便り」では第15回目から、
かつての講演や発表を原稿化し
,掲載しています。

『罪と罰論』の出版(2007)に先立つ10年ほど、
私はこの作品について様々な試行(思考)錯誤・デッサンを繰り返していました。

『罪と罰』(1866)は、人間と世界とその歴史、更には超越世界についての思索を促す問題性に満ち、
遺作『カラマーゾフの兄弟』(1880)と並んで、正にドストエフスキイの最高傑作と言うべきでしょう。

★この『罪と罰』と取り組んでいる内に、
私はラスコーリニコフがペテルブルクへの上京後、ザルニーツィナ婦人の許に下宿をし、
直ちにその娘ナターリヤと婚約をしたこと、
そして二年後の婚約者の死後、彼が「ナポレオン理論」にのめり込んでいったこと、
これらの事実の背後に作者ドストエフスキイは如何なる意味を込めたのか、非常に気になり始めました。

金貸しの老婆を殺害するに至る前に、またソーニャと出会う前に、
ラスコーリニコフはこの下宿で、婚約者ナターリヤとの間に如何なる「春の夢」を育んでいたのか?
―― テキストの検討を続ける内に、私にはドストエフスキイが、
この下宿生活に深い奥行きと拡がりを与えていることが見えて来るように思われました。

 ★前回は『罪と罰』からナターリヤに関する情報を集めて整理し、考察を加えました 。
今回はこれらの情報を 、
ナターリヤの母ザルニーツィナ婦人の下で働く召使のナスターシャに託し 、

彼女が二人の回想を語るという設定の下で、
改めて考察を試みます 。

《創作》と銘打ちましたが、
飽く迄も与えられた情報を基に、彼女がバランスよく物語ることで、
若い二人の二年間にわたる婚約生活とその持つ意味が相当明確にされ 、
ここからは「ナポレオン理論」に新しい光が当たるばかりか、
「天使」ソーニャに先立つ 、隠れた「市井の女神」ナターリヤの姿
浮かび上がって来るように思われます。

皆さんも改めてナスターシャの話に耳を傾け 、
ラスコーリニコフとナターリヤ が見た二年間の「春の夢」に 、
様々に 想いを馳せて頂ければと思います。

    
詳しくはこちらをご覧ください。

「研究会」→ドストエフスキイ研究会