文学思想講座
文学思想講座
第1 回:1990 年10 月2 日~ 4 日「市民の自由と市民の論理──閉じた社会から開かれた社会へ」
講師:久野 収
戦前のファシズムによる自由の暗黒時代・ウルトラナショナリズムの時代に反ファシズム運動を試行し、戦後から今日に至るまで常にアクチュアルな市民的自由とその実践を呼びかけてきた久野収氏が、20世紀現代史と自らの個人史とを重ねあわせたところで、トランスナショナルな開かれた社会を更に広げていくために、「市民的自由」の獲得と実現、それを支える市民的倫理がいまいかに必要かをわかりやすく語った。
第2 回:1990 年10 月30 日・31 日「わが生涯」 講師:堀田善衞
スペイン内戦への少年詩の内的アンガジュマンに端を発し、『ゴヤ』『路上の人』で一つの完成をみた深いヨーロッパ体験。同時に東京大空襲、異郷・上海での敗戦など時代の生な動きをくぐりぬけたまなざしで培われたアジア・アフリカへの連帯。
常に自分を掘りつづけることによって得た冷徹な思想とさまざまな運動に関わった国際的視野をあわせもった作家・堀田善衞氏が、敢えて個人史を語ることによって、ありうべき近代芸術家論の一つの極致としての自画像を表現。
第3 回:1991 年3 月25 日~ 28 日「小説とは本当は何か」 講師:中村真一郎
第一日目「小説の歴史」からはじまって、「日本近代の小説の歴史」、「近代の諸問題」、「小説の未来」というテーマを軸に、本来文学が文学たりうるとはどういうことか、を、西欧文学から日本古典文学までの膨大な作品の渉猟をもとにポリフォニックな全体小説を提唱してこられ、かつその優れた実践者である中村真一郎氏に、文学作品における構想力や形式の問題から翻訳不可能な領域にまでわたって明晰で魅力的な語り口で展開していただいた、文学の思いがけない広がりと魔力に触れた楽しい講座。
第4 回:1992 年1 月23 日~ 27 日「異者としての文学」 講師:小田 実
今世界は大きく揺らいでいる。天安門以降の中国、東ヨーロッパの激動、戦後政治の転換を迫られる日本。世界は今さまざまな形で問題の根源に直面しているといえよう。こうした現実の中で、われわれはどう生き、どう考え、何をどう読み解いていくか。この激動の状況下における文学の書き手、読み手の立場と姿勢に論及する。
プログラム: 1日目「「異者」としての文学」、2日目「「美」と人間」、3日目「「政治」と人間」、4日目「「核」と人間」、5日目「実際に書いてみよう」