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2017年度 第26回 主任研究員会議


2017年4月18日(水) 第26回文教研主任研究員会議が京都ガーデンパレスで開催されました。

<スケジュール>
2017年4月18日(水)13時半より18時まで

*文教研の昨年の活動報告と今年度の予定
*主任研究員の先生方の発表-昨年度の研究とこれからの予定について

木村敏先生(検査入院のため欠席・代読)
中川久定先生(体調不良めため欠席)
長野敬先生
丹羽健夫先生
渡辺京二先生

*全体討論




木村敏

2016年度研究実績と今年度の計画

1 2016年度に著書や論文として発表した研究実績は何もない。僅かに日独文化研究所の年報『文明と哲学』第8号(2016/3/31刊)に、エッセイ「人生の転機にあたって」を掲載しているのみである。このエッセイには、1994年に京大を定年退官以来、毎週2回(後には1回)の外来診療でごく少数の患者との間で続けてきた「臨床哲学」的な(一/二人称的な)面接を、診察机の上にコンピュータが設置されて三人称化したのを機にやめてしまって--ということは医者であることを辞めて── 一介の「人間」に戻ったいきさつが書いてある。

これ以外には2016年の10月に雑誌『現代思想』が『木村敏・臨床哲学のゆくえ』という臨時増刊号を出してくれて、それに私自身の発言も掲載されているということはあった。



今ひとつ挙げるとすれば、
英国で刊行されている雑誌History of Psychiatry,Vol.27,No.108,December2016 に、コペンハーゲンの著名な精神科教授 Parnas の発案で、以前私の門下で前途を嘱望されながら1990年に37歳の若さで世を去った故長井真理さんの最後の完成論文「分裂病者の自己意識における『分裂病性』」(1990)の英訳が Classic Text として掲載されたが、この英訳の指導を引き受けたのが私だった。長井はこの論文でデカルトの cogito ergo sum (我思う、故に我あり)に関説し、「我思う」と印欧語族の「中動態」との密接な関連を指摘しているが、これはその後、私が「人称」の問題に深く関わることになった端緒としての意味を持っている。

2  昨年度は論文を書けなかったが、その後も河合文教研主催の臨床哲学シンポジウム(年1回)、心身論研究会(年4回)、読書会「アポリア」(月1回)、同「パトソフィア」(月1回)には欠かさず出席して、フランス語とドイツ語での文献講読と討論会は続けている。その一端は論文や討論のかたちで世に問うているので、来年の主任研究員会議にはその経過を報告できる予定である。

 




長野敬

2月中旬に思いがけずインフルエンザをこじらせ(たぶん肺炎に陥っていた)、自宅近くの「東京都保健医療公社多摩北部医療センター(たまほく)」に相談に行ったところ、2週間「ほどの入院」を勧められ(医療行政側も)、自分も大分へたばっていたこともあり(当日朝から食欲がなく絶食状態)、勧告に乗って入院した。そのままセンターの病室にとどまったので、外部との連絡をせず、あちこちにめいわくを掛けました。

 今回は前回からの宿題を展開する余裕がなく、入院時の体験などを中心とする感想や意見の報告にとどまる。
①「作業現場」としての医療。外側からの評論は(技術的な「難病」などを別として)、容易であり、責任が生じない割に有効でないこと(→③)。
②高齢化への対応(入院見聞の事例)。地域性(→「多摩北部医療センター」)。
③「現場」で遭遇する矛盾(抗生剤投与の功罪)。
④「リハビリ」体験(運動面と、メンタル〈社会性〉面)。
⑤「診断」とは何か(長野の今回「入院時に係る傷病名」は、退院時の症名では「脱水症」)。
⑥以下、おもに現状。「看護師」の重要な(少なくとも一般的な看護での)位置づけと、連携活動。
⑦資料A。たまたま送られてきた『地域医療白書』。(A1~A2) 略
⑧資料B。「診療明細書」など一部分。(B1~B2) 略

 



丹羽健夫

A.この一年でやったこと。
1.中西学園(名古屋外国語大学等)関係
定例会議(隔週金曜日)出席
理事会(年5回)出席
2.河合塾教育情報部発行の、高校先生向け情報誌「ガイドライン」に書評コラム『教育を読む』の執筆。

2016.4月号 麻生和子著『父吉田茂』
      7.8月号 藤原てい著『流れる星は生きている』
         9月号 林和利著『古今東西ニッポン見聞録』
       11月号 島秀之助著『プロ野球審判の眼』

B.今後の計画
ガイドライン『教育を読む』の集冊版刊行予定;中西学園出版会。
(参考書類:バックナンバーリスト) pdf はこちらへ→教育を読む.pdf


 

 

 

 

渡辺京二

2016年の仕事

A)単行本
『さらば政治よ──旅の仲間へ』晶文社(2016.6.11)
『父母の記──私的昭和の面影』平凡社(2016.8.16)
『私のロシア文学』文藝春秋社(2016.8.19)
『新編 荒野に立つ虹』弦書房(2016.11.15)

B)連載
「バテレンの世紀」(『選択』2016年1月号から12月号、完結)
「日本詩歌思い出草」(三)~(五)(『道標』52、53、54号)

C)エッセイ
「荒野に泉湧く」  (『熊本日日新聞』2016年4月28日)
「私には友がいた」  (『文藝春秋』2016年6月号)
「虚無と向き合う」  (『アルテリ』2号)
「私の夢地図」  (『アンブロシア』42号)
「私は何になりたかったか」  (『アンブロシア』43号)
「「許す」という意味」  (『魂うつれ』2016年10月25日号)
「人情と覚悟」  (『文藝春秋』2017スペシャル冬号)
「脱線とグズリ泣き」  (『藍生』11月号)
「山脈の記憶」  (『日本経済新聞』2016年3月13日)
「多重空間を生きる」  (坂口恭平『幻年時代』幻冬舎文庫版・解説)