臨床哲学とは何か ── 臨床哲学の諸相
新刊紹介
臨床哲学とは何か──臨床哲学の諸相
監修 木村 敏・野家啓一
発行 河合文化教育研究所
発売 (株)河合出版
2015年1月刊行
A5版 4000円+税
〔監修〕
木村 敏
野家啓一
〔執筆〕
木村 敏
鷺田清一
野家啓一
鈴木國文
兼本浩祐
谷 徹
榊原哲也
津田 均
浜渦辰二
〔対談〕
木村 敏
野家啓一
目次
まえがき/木村敏
第12回.第13回河合臨床哲学シンポジウム・プログラム趣意書
対談・臨床哲学とは何か/木村 敏・野家啓一
精神医学と哲学の共通点としてのphilosophieren
自明性をめぐって
ハイデガーと西田幾多郎に学ぶ
「一人称」へのこだわり
ヴァーチュアリティの構造
Personを支えるMetakoinon
49第四人称とは何か
垂直のあいだと水平のあいだ
物語りと現象学的杜会学
Ⅰ 臨床哲学とは何か
◎基調講演──────
臨床の哲学/木村 敏
1 はじめに
2 「あいだ」への着目──臨床哲学への序奏
3 離人症──アクチュアリティとリアリティ
4 二つの「現存在分析」──ビンスヴァンガーとボス
5 統合矢調症(精神分裂病)理解と「自己」の二重性
哲学の臨床/鷲田清一
哲学が語りだす場所
技術の技術
哲学のフィールドワーク
哲学はいつ哲学か
付録・コメントヘの応答
さまざまの質問・異論を承けて/鷲田清一
◎基調講演へのコメント────
臨床哲学の現場をめぐって/野家啓一
1 症状の背後へのまなざし──木村敏氏へのコメント
2 臨床哲学の再審──鷲田清一氏へのコメント
精神医学と哲学が並んで問いを立てる時……/鈴木國文
はじめに──臨床と哲学について
木村理論が解らなくなるところ
時間と体験
ラカン理論に寄せて
症状と本質は二階と一階か
他者の声を聴くこと
他者の声と精神療法
他者の声を聴くことと近代
精神医学が置かれた矛盾した立場
おわりに──再び、臨床と哲学について
臨床の哲学と哲学の臨床
──何処から語っているかについて敏感であること/兼本浩祐
1 臨床の哲学──多分脳がつくる表象の隙問を埋めるのはメタノエシスなのだろうけれど統合矢調症的結び方というレジリアンスはあるのだろうか
2 哲学の臨床── 一つの現場としてのてんかんのこと
3 臨床の哲学と哲学の臨床──治療者がどこから語りだすかに敏感であること
Ⅱ 臨床哲学とは何かⅡ
◎基調講演──────
感性と悟性の統合としての自己の自己性──超越論的構想力の病理/木村 敏
1 自己の個別化原理の病理としての統合矢調症血
2 中動態と自己の病理
3 能動的悟性と受動的感性の統合としての自己
4 まとめに代えて
臨床と哲学のあいだ・再考/野家啓一
1 はじめに
2 臨床哲学の立ち位置
3 「当事者研究」が拓いたもの
4 アウシュヴイッツとシベリヤ
5 臨床哲学における「往相」と「還相」
◎基調講演へのコメント────
「あいだ」と「二」/谷 徹
1 精神医学と哲学との「あいだ」に向けて
2 木村敏氏に向けて
3 「あいだ」=「あわい」に向けて
4 野家啓一氏に向けて
〈われと汝〉と〈われわれ〉/榊原哲也
1 はじめに
2 ハイデガーの「顧慮的気遣い」
3 先人格的な衝動的関係
4 人格的に向き合う〈われと汝〉の関係
5 共に歩む人格的関係
6 〈われわれ〉と〈われ-われ〉
限界状況での精神病理学、独白の出会い/津田 均
1 Jaspersと精神病理学の足場としての限界状況
2 木村の方法論
3 長井の分裂病論の再検討
4 言明の透明さと精神病理理
5 身近な極限状態と固有の(特異な)出会い
二つの一臨床哲学一が再会するとき/浜渦辰二
はじめに
1 二つの臨床哲学
2 臨床哲学と現象学
3 現象学と当事者研究
4 当事者研究と臨床哲学
5 木村「治療論」と当事者研究、そして、イタリアとフィンランド
おわりに
当事者とは誰か──「あとがき一に代えて/野家啓一
著書の内容
精神病理学と哲学の核心を貫いて拓く新しい試み
特集 臨床哲学とは何か
なぜ「臨床哲学」というまった<新しい学問の試みが、あたかも既成の学問を内から食い破るかのように、期せずして精神病理学と哲学に同時に生み出されていったのか。多様な「いのち」の声に耳を澄まし、そこから柔軟にPhilosophierenしようとする臨床哲学は、果たして客観的な科学を超え出て未だどこにもない新しい普遍性を拓くことができるのか。木村敏・鷺田清一・野家啓一という精神病理学と哲学の巨匠にして臨床哲学の可能性をおし拡げ続ける革新者たちの刺激的な思考を中心に、気鋭の精神医学者・哲学者が臨床哲学の意味を根底から問い直す。