医学的人間学─西欧的主体と東洋的主体「生命論」
国際シンポジウム
医学的人間学─西欧的主体と東洋的主体「生命論」
Medizinische Anthropologie in Ost und West
主催:河合文化教育研究所
共催:東京ドイツ文化センター
後援:関西ドイツ文化センター
ヴィクトーア・フォン・ヴァイツゼッカーの「医学的人間学」によれば、多くの病気は、病者が幼児期以来の人生において遭遇してきた人間関係上のもろもろの困難がある時点において克服困難な危機的状態に到達し、そこで身心両面の変化を招いて病的状態に陥ったものとして理解される。従ってここでは、病者がみずからを取り巻く人間的環境に対して自己のありかたを定位する主体的行動と、これが病者の身心相関に反映された病的事態という、次元の異なった二つの問題が切り離しがたく複合している。従来の心身医学や精神医学では病気の身体面と心理面がそれぞれ別個に研究され、一方で主として身体的側面での疾患過程が病気の原因とみなされ、他方で主体性や自己の問題はもっぱら心理的側面の側へ引き寄せられて心因論的色彩の濃い文脈で語られてきた。しかし身心の両面はともに病者がその人生を生きる二つの局面であり、また病者の対人環境における主体性も彼がそのときどきの生活を生き抜くために要請されるものである以上、主体・身体・心の諸契機は同じひとつの問題複合──「生きる」という問題複合──を形成するものとして理解しなければならない。本シンポジウムでは、ヴァイツゼッカーの「医学的人間学」を発展させた「人間学的精神医学」の立場を共有しながら、「主体」や「自己」の捉え方においてはおそらく基本的な差異を含むであろうと思われる日本と西欧の精神科医の討議によって、「身心相関」および「生と死」の二つのテーマについての論議を深めた。
■ PROGRAM
名古屋「身心論」シンポジウム
〔 講演 〕
木村 敏「 身心相関と間主観性」
J・スコット「 近代の身心問題と古典的疾病分類」
W・ブランケンブルク「 身心の相互交流」
○パネリスト:上記講演者
司会:大橋良介
日時:1996年10月26日(土)14:00~18:00
会場:河合塾名駅キャンパス16号館サクセスホール
東京「生と死」シンポジウム
〔 講演 〕
木村 敏「 人間学的医学における生と死」
J・スコット「 個別的生における生と死の伴侶性」
W・ブランケンブルク「 死─豊かな生への技術」
○パネリスト:上記講演者
司会:野家啓一
日時:1996年11月2日(土)14:00~18:00
会場:東京ドイツ文化会館ホール
■ PROFILE
木村 敏
河合文化教育研究所
主任研究員、京都大学
名誉教授
J.スコット
元ルーヴァン・カト
リック精神医学科教授
W.ブランケンブルク
元マールブルク大学
医学科教授
大橋良介
京都工繊大学教授
野家啓一
東北大学教授
同時通訳
三島憲一
(大阪大学教授)
大貫敦子
(学習院大学教授)