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自己─精神医学と哲学の観点から

日独シンポジウム
自己─精神医学と哲学の観点から
Das Selbst aus der Sicht der Psychiatrie und Philosophie


主催:河合文化教育研究所
後援:ドイツ連邦共和国総領事館
日時:1986 年9 月20 日(土)
会場:河合塾千種校SDP ホール


 「17世紀にデカルトが深刻な懐疑を重ねた結果到達した《われ思うゆえにわれあり》という結論は、3世紀後のわれわれにとっては、更に懐疑を突き詰めるための出発点でしかないように思われます。《われ》とはなんなのか、われわれがものを考える時《われ思う》といいうるのはどうしてなのか、《われ》という代名詞で呼びうるような《自己》とか、その《同一性》とかが疑問の余地のない明白なもののように思われるのは、はたして錯覚ではないのか、錯覚だとすれば、この錯覚はわれわれが生きて行く上でどのような意味を持っているのか、こういった数々の疑問が、特に前世紀末以来の百年間、思想界を大きく動かしてきました。
 フッサールからハイデッガーへ、そして現代のポスト構造主義思想へと展開してきた現象学の流れも、わが国の西田・田辺哲学も、結局は《われ》の存在をめぐっての思索であったということが出来ます。一方、分裂病その他の精神病が、病気としては脳の変化という形をとりながら、その本質においては複雑な人間関係の中での《自己》の保全に関わる危機的な事態であることも、この百年間にますます明白になってきました。精神病の発病に至らなくとも、現代の若者たちの間には《自己》や《自己同一性》をめぐる懐疑に苦しんでいる人が無数にいるはずです。
 さらに、日本語と西洋の言語との人称代名詞の用法からも分かるように、《われ》とか《自己》とかの捉え方には文化による大きな差異があります。」(木村敏著『人と人との間』より) 以上のような問題意識のもとに、本シンポジウムは、東洋思想と西洋思想との、また哲学と精神医学との出会いの試みとして、日独の先端の哲学者・精神医学者がクロスする形で熱い議論と報告がなされた。

 

■ PROGRAM
〔 講演 〕
W・ブランケンブルク( マールブルク大学教授)
「『自己性』の現象学と精神病理学のために」
坂部 恵( 東京大学教授)
「自在・ふるまい・かなしみ」
木村 敏( 京都大学教授)
「内省と自己の病理」
A・クラウス( ハイデルベルク大学教授)
「ヒステリー者とメランコリー者のアイデンティティ」

〔 ディスカッション 〕
司会:笠原 嘉( 名古屋大学教授)
○パネリスト:W・ブランケンブルク
A・クラウス
木村 敏
坂部 恵