HOME  >  文教研ぷらす  >  グレートジャーニー ユーラシア大陸は平らだった-ベーリング海峡からアフリカ人類発祥の地のアフリカまで-  >  6.自然に優しいとはー3つに集約

6.自然に優しいとはー3つに集約

6.自然に優しいとはー3つに集約できる。
    ①生態系を壊さない。
    ②地球を汚さない。
    ③資源を使わない。
     その3つを彼ら先住民は確実に守っている。

 

では、グレートジャーニーで、アラスカからベーリング海峡をユーラシア大陸に渡るところからお話ししていきたいと思います。極東シベリア・モンゴル、そしてネパールについてはわりあい詳しく伝えします。


これはアラスカとロシアの間にあるセントローレンス島でクジラを捕りました。

             このシーズン初めてのクジラが捕れた。
             ブルドーザーの力を借りて陸に上げる。

最近、下関での国際捕鯨会議で、日本の調査捕鯨が反対されたものですから、止せばいいのに先住民の捕鯨まで日本が反対するというバカなことをやってしまいました。
日本と違って彼らはこれがないと生きていけない。
要するに必要だから捕ってる。
もちろん日本にもクジラを食べる文化というのがある。
アメリカの反対とかヨーロッパの反対というのは、ほんとうに許せない。

例えばクジラを捕っちゃいけない。
なんでいけないかというと、クジラは人間に近いから、頭がいいから。
イルカの場合はかわいいから殺しちゃいけないという人がいる。
じゃあ頭が悪ければ殺していいのか、かわいくなければ殺していいのかということになってしまう。

             セイウチの皮を張って作ったスキンボート。
             クジラ捕りのために、音をたてず帆走する。
             アルミボートを持っている者も多いが、音がするためクジラ漁では使わない。       


彼ら先住民はちゃんとクジラの数がどのくらいいるか計算している。
アラスカにはエスキモー捕鯨委員会というのがあって、年間70頭捕れば数は維持できるだろうという計算をして捕っています。
その70頭を村々で分け、このセントローレンス島のひとつの島では6頭か8頭だか、ちょっと忘れましたが、とにかく捕る頭数を限って捕っている。
クジラを捕る時はちゃんと捕鯨休暇というのがあって、子供たちの手も必要だから、春先の捕鯨期間は小学校や中学校を休んで捕鯨を手伝ってもいいということになっている。
だから、クジラが引き上げられた時は、ほんとうに、この村の人口は600人ですが、今まで見たことがない、おじいちゃんやおばあちゃん達がみんな出てきて、お祭り騒ぎ。

             年長者の指示のもとに解体は進む。
             村人たちが集まって来て表皮や肉は24人のボートのキャプテンに平等に分配される。
             さらにキャプテンが村人たちに分配し、獲物の恩恵は皆に与えられる。

             クジラを陸に上げると、解体作業が始まる。
             まず、なぎなたのような刀で表皮を剥がす。
             マクタックと呼ばれ、エスキモーが最も好む部分でもある。


要するに食べるということ以上に、村の人たちが華やいで、みんなで一緒になる。
一緒に同じことをするというのは必ず必要なことで、そういうことをするためにクジラを捕るというのは非常に大きいことなんです。
クジラはそのころ南から北にやって来ますが、食べられるためにやって来ると彼らは言ってます。
要するに、自然の世界、野生の世界というのは必ず食べるものと食べられるものがいる。
食べるものも必要なんですね。
それで数が制御されている。

例えばよく例に出されるのは、狼とレミングの関係。
レミングはネズミの仲間ですが、天敵の狼はいない方がいいんじゃないかと思うかもしれない。
そうすれば食べられないですむ。
じゃあ、狼がいなくなったらどうなるかというと、レミングが増え過ぎてあたりの草を全部食い尽くし、結局自分たちで全滅してしまう。
だから、ある程度、天敵が必要なんです。
食べられるものが必要なんです。
だから、彼らの中では、「クジラは我々に食べられにやって来るんだ」と言っている。

 


これは白熊です。捕った肉はちゃんと食べる。
ここでは子供たちが、白熊の頭を叩いて遊んでいる。
これがいいんです。

                           シロクマを捕ると、解体し、肉を食べる。
                           毛皮は防寒着のフードの良い材料となる。
                           子供の頃から解体場面を見せ、
                           自分たちが他の生命の犠牲によって生きていることを教える。

これを見て、血だらけで残酷だとか、気持ち悪いとか思ってる人がいるかもしれないけど、子供の時からこうやって、こういう場面を見ているとどういうふうになるかというと、自分たちはこういう命を食べているんだということがわかる。
要するに人間というのは命を食べなければ生きていけない。
植物でも動物でも。やっぱりこういうことを見て初めてわかるんですね。
だから逆にいうと、ほんとうに1頭の動物を捕ったら食べ尽くす。
毛皮はもちろん食べないで着るものに使いますが、肉など、熊の場合、肝臓はビタミンAが強すぎて死んでしまうので食べない、食べたら死ぬものはもちろん食べませんが、とにかく使い尽くす、食べ尽くすということをする。
 



アラスカのブルックス山脈という人口が非常に希薄というか、ここは半径200キロ以内、だいたい北海道と同じくらいの広さの中に1家族だけが住んでいる。
お父さんとお母さんと、11才と8才の娘。罠でウサギを捕って、これ食べちゃうんです。
彼らも命の大切さをすごくわかっている子たちで、じゃあ勉強はしていないかというと、そうじゃない。
1年のうち2ヶ月は学校に行って勉強している。
でもあとの10ヶ月、特に真冬なんかは北極圏だから太陽が出ない。
そこで一家4人で暗~い生活を送っています。
暗いけど彼らの性格はすごく明るい。

         半径20キロ以内には誰もいない広大な空間の中で、
         コースさん一家4人は4×5メートルの小さなキャビンを建て質素に暮らしている。
                   前列右が長女のロンダ(11歳)
                      左が次女のクリン(8歳)


2~3ヶ月に1回、セスナ機が飛んで来ます。
乗って来るのは学校の先生。
教えに来るのかというとそうではなくて、持ってきた教材をどうやって使ったらいいかをお母さんに教えに来る。
だから、ふだん午前中はお母さんが娘たちに勉強を教えて、午後は森とか川に行く。
自然が先生なんです。
お父さんは時々手伝う。

                母親のドナーさんが、学校から届けられた教材をもとに娘たちに教育をする。


最初は、お父さんやお母さんは狩りが好きだから、魚捕りが好きだからここにいるんだと聞いて、親が好きなことをやりたいから子供が犠牲になっているんじゃないか、ずいぶんと勝手なお父さんお母さんだなあと、自分のことは棚に上げて思っていましたが、でも一緒に暮らしてみたら、自分の娘もここに送り込んで、何年か教育させたいと思うほどいい教育をしている。
現金収入はお父さんがハンターのガイドなどをして得ている。
発電機を、彼は好きじゃないんですけどもらって、1週間に1回だけ洗濯機をまわすために使ってるらしい。
その時だけ電気がつく。
それでパソコンを動かし、教材の中にパソコンのソフトがあるので勉強をする、半分はゲームですけど。
お母さんは裁縫をしてお父さんはゲームボーイで遊ぶ(笑)。
すごく素直でいい光景です。

                ハイモさんの2人の娘が仕掛けた罠にも2匹がかかった。
             彼女たちの大好物でじっくりと時間をかけて蒸し焼きにする。





これが、ベーリング海峡。
グレートジャーニーにとっては難関のひとつ。
ほんとうは凍っている時に歩いて渡ろうとしましたが、やっぱり地球温暖化はいろんなところで起こっていて、暖かい。
ほとんど凍らない状態になっている。
アンデスでもパタゴニアでもアラスカでも、氷河は全部後退しています。
山に登るのにもみんな苦労している。
氷の方が岩より登りやすいんです。
結局ここはカヤックで移動しました。
よく許可がおりたと思っています。

 




北極圏のセイウチです。
陸ではのろまですが、海に潜るとすごく素早い。

                セイウチ
これを食べて生きてるインチョウンの人たちと一緒に暮らしました。
こういうセイウチのコロニーを壊したくない。
だから、彼ら自身で、やっぱり自分たちで規制して、ここのコロニーのある手前、距離と時間は忘れましたが、何キロ以内ではエンジンを使わない、鉄砲を使わないということを自分たちで決めている。
手こぎでコロニーに近づいて銛で突く。
それで捕る。
非常に危険な狩りで、セイウチがぶつかってくるので、ボートに一回穴があきました。
セイウチが潜ると彼らは一生懸命に足踏みをします。
通じないと思いますが、セイウチを脅しているつもりらしい。
セイウチがぷかーっと浮かんできた時、銛をドスッと刺す。

                インチョウンの東方にはセイウチの小さなコロニーができた。
                海岸は高さ100メートル以上の絶壁に囲まれていて、海からしか近寄れない。
                5キロ以内ではエンジンの音を止めなければならない。
                セイウチは海中では軽快に動くため、危険だ。
                至近距離まで近寄って行ってヤリで心臓を狙う。


さっきのセント・ローレンス島のもそうですが、ここインチョウンでもクジラを捕っていますが、自分たちで規制している。

                セイウチが捕れるとボートの乗組員とその家族によって解体され、
                親族や年金生活者にも分配される。
                海岸には血痕しか残らない。



先ほど話したアラスカの4人一家も罠をしかけて狩りをする。
やっぱり毛皮を捕っているとみんなから責められる。
彼らは街へ出ていくと白い目で見られる。
肩身の狭い思いをしている。
それはなぜかというと、毛皮を捕って暮らしてるからです。
だけど一緒に暮らしてみると、北海道と同じくらいの広さで、でっかい屋敷を作って暮らしているのではなくて、ほんとうに6畳くらいのキャビンの中で、もっと大きい家作ればいいのにと思うのに、それも2段ベッドで暮らしている。
ほんとうにギリギリの大きさ。
要するに、あまりにも広いと逆に必要以上のものを作ろうとしないんですね。
この広さの方が暖かいし、電気も1週間に1回だし、食べ物は廻りにあるものですませ、現金も使わない。

ここインチョウンの彼らも同じで、セイウチやクジラを捕ったりすると、すぐ過激な自然保護団体がやって来る。
なんでクジラ殺すんだとかいう。
だけどよく見ると、彼らの暮らしぶりなんかすごくつつましやかで、こういうセイウチとかクジラは、いま何頭いるか、何頭捕れば大丈夫だとか、監視しながら計算している。
だから、よく「地球に優しく」というようなことを言う人たち、特に過激な自然保護団体が、でっかい鉄の船でディーゼルを撒き散らしながらやって来るけど、どっちが自然に優しいかということを考えてみるといいと思います。



自然に優しいということを簡単にいうと、3つに集約できると思いますね。
ひとつは生態系を壊さない。
ひとつは地球を汚さない。
もうひとつが資源を使わない。
その3つを彼ら先住民は確実に守っている。

アラスカの猟師にしても、彼らは我々よりもはるかに地球に優しい。
ディーゼルを撒き散らして、お前らクジラ殺すなと言ってやって来るやつらの方が、地球に優しくないですよ。
そういうふうに彼らを見ながら感じました。

 

 

 グレートジャーニーでは「旅は人力のみ」というルールを作った

 グレートジャーニーは奇跡の旅だった

  イスラムの人たちの優しさ

4 「足るを知る」アファール人

5 人間は進化はしていても進歩はしていない

 自然に優しいとはー3つに集約

7 トナカイ橇で旅をしたかった

8 「優しさ」さえあれば、どうにでもなる

9  当たり前のことがいかに大切か

10 「海のような人」

11 チベット。欲望、祈り、巡礼

12 中国のチベット以上にチベットの文化を残しているネパールの北ドルポ

13 大人に媚びない。良く働く子どもたち 

14 死の決め方とチベット医学

15 グレートジャーニー完結。タンザニア ラエトリ遺跡