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4.「足を知る」アファール人

 

 4.「足を知る」アファール人

あの同時多発テロが行われた9月11日はエチオピアの元旦でした。
西暦だけが世界の暦ではなく、国によっていろいろあるわけですね。日本でも旧暦のように、イランでも7月がお正月。



ラマダンの終わった翌日、
礼拝の後音楽と踊りのセレモニーが開かれ、
ごちそうを食べる。
そこに集まった
アファール人の少女たち

 

 

 

 

 セレモニーを見る少女たち

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてエチオピアでは9月11日が元旦でした。その元旦にイスラム教徒と一緒にいました。エチオピアは多民族国家でいろんな人が住んでいる。高地にいる人たちが支配者、彼らはキリスト教徒ですが、その時一緒にいたのはインド洋に近い所に住んでいるアファール人というイスラム教徒でした。アムハラ語というのが公用語ですが、多民族国家なのでいろんな言葉でラジオを放送している。その他に10以上の民族がいるのでニュースもいろんな言葉でやっている。

その時はテレビがないところ、電気もないところにいました。
そういう所では、ラジオだけはほんとうに宝物のようにして、40年前くらいの日本もそうだったんですが、トランジスタラジオがきれいに布でくるんで大切にしまってある。それをかじるようにして聞いていました。
その時、ニューヨークとワシントンで旅客機がビルに突っ込んだという話を聞いて、最初は冗談じゃない? あるいは何か映画の予告じゃないのと言ったんですけど、実際にあった。


私なんかはテレビを見たり雑誌を見たり、リアルに映像を見て初めて想像力を働かせるということに慣れすぎているため、ワシントンとニューヨークでビルに旅客機が突っ込んだよと言われ、耳で聞いてもイメージがわかない。すごいことが起こったんだろうけど、イメージとしてどういうことが起こっているのか、映像として頭に浮かんでこない。だけど、それはたいへんなことが起こったなと思ったけど、1週間以上経って町に出てきて、テレビで映像を見て初めてすごいことが起こったなと思いました。

 

教師の指導のもとで
アラビア語のコーランを読む


 

 

 

 

 

 

 

 

その時、イスラム教徒であるアファール人の反応というのが、多分イスラムの人全体が思っている反応だと思いますが、「アメリカ人というのは、ほんとうに昔から悪いことをしてきたね。死んだ人にはかわいそうだけど、仕方ないね」と言うんです。
その後の反応が非常に特徴的で、私が日本人だということを知っていて、「日本人も酷い目に遭ったね」と言うんです。なんのことかと思ったら「広島・長崎に原爆を落とされたでしょう」と言う。

それから思いましたが、30年以上旅をしていて、北米以外の国で出身が日本だというといろいろ都市の名前にあがってきますが、一番知名度が高いのはやっぱり東京。
でも2番目3番目は決して京都とか大阪じゃない。
どこの国に行っても広島・長崎なんです。やっぱり初めて原爆を落とされたということは、世界中の人々にすごい衝撃で、50年以上経っても一般の人の脳裏からは離れていない。

その後、日本の自衛官が米軍の手伝いをしに行きましたね。わたしはその後、2度同じところに行きましたが、彼らの反応は「政府は軍艦を送ったかもしれないけど、一般の人はそんなこと思ってないでしょう。一般の人と政府の考え方とは違ってるんでしょ」とすごく優しい言い方をするんです。ほんとうに発想がすごく優しい。

9月11日にはアファールの人たちと一緒に寝泊まりしていたと言いましたが、そこは大家族で、息子たちがたくさんいるので、結局は家畜などは息子たちに分けなければいけない。ですけど、持ってる家畜が山羊、羊あわせて200頭くらい。それからラクダが数頭。
エチオピアという国は、世界全体でも貧しい国に入りますが、その中でもアファール地区というのは非常に貧しい。200頭の山羊、羊を持っているのは平均くらい。そこのアリさんというご主人に、「もっと家畜が増えたらいいですね」と言ったら、「いやこれでいい、これで満足なんだ」。「これでハッピーなんですか」といったら「ハッピーだ」という。

 

家畜の世話をする少女。
ここでは子どもたちも重要な役割をはたす。



 

 

 

 

 

 

 

 

たしかに、その人はふっくらとしていて、なんだか幸せそうな顔をしている。「これでいいんですか」と言ったら、「いやこれは神がくれたものだから、だからこれでいいんだ」。
要するに、幸福感というものを「欠乏感が失くなった時を幸福」とするなら、この人ほど幸福な人はいないなあと思いましたね。ほんとうに足るを知るという、日本には昔からあったそういう生き方を宗教が支えていると感じました。といって僕はイスラム教徒にはなれないし、特にこれといった宗教が好きではないですが、ただ宗教がこれからなんらかの役割を果たすだろうなということは感じました。

 

ヤギ、ヒツジの世話をする女性。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

乳搾りが終わると、
家畜を草地へ誘導する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というのは、今回チリから始まった旅で、ほんとにいくつも社会主義だったという国を通ってきました。チリは選挙で選ばれた社会主義だったのでちょっと様相が違いますが、ニカラグア、あるいはロシア、モンゴル。どこもまだ社会主義を引きずっているという感じが何かします。極東シベリアの人なんかまだソ連を懐かしんで、ソ連時代が良かったという人もかなりいました。

今回、初めて社会主義国に入ったのが中国でした。
社会主義ってどんな国かすごく楽しみにしてましたが、入ったとたんにびっくりした。えっこれが社会主義なの? といった感じでしたね。
テレビに流れているコマーシャルを見てると、ほんとうに欲望をそそる、次から次へと欲望をそそるようなコマーシャルばっかり出てくる。それでびっくりしましたが、十何億という人間がいる社会でこのまま欲望をそそるような進み方をしていったらどうなるか。
その後にイスラムだったので、たぶん僕はなんとなく中国は宗教でつぶれるのではないかとその時に感じました。


初期人類だとか、あるいは多分産業革命が始まるまでは、欲望はむしろ向上心と結びついて人類は世界中に拡散できたのだと思いますが、ただ、少なくとも20世紀の後半になると、資源というのは有限であるということ、そして便利・快適・ものが豊かになっていくたびに地球が汚れていくことに気が付き始めたわけです。20世紀になって欲望は抑えなければいけない、少なくとも物質的な欲望というのは抑えなければいけない時代になったと思います。

そういう時に何が歯止めになるのかということを考えた時、宗教というのはひとつの大きな歯止めになる。地球を一巡してみて、一番、こう、身をもって体現して生きている人たちはイスラムの人たちだ、イスラムというのは少なくともそういう「足るを知る」ということをと感じました。

 

主食のガンフォーを料理する女性。
水で練った小麦粉を蒸す。
バター、チーズをかけて食べる

 

 

 

 

 

 

 

 

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  イスラムの人たちの優しさ

4 「足を知る」アファール人


5 
人間は進化はしていても進歩はしていない

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