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谷川 道雄

  
谷川 道雄 (たにがわ みちお)
故人


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プロフィール
著書 
シンポジウム・講演会
わたしが選んだこの一冊
わたしの近況
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◇◆ プロフィール ◆◇


谷川 道雄(1925ー2013)

1925年熊本県水俣市生まれ。
京都大学文学部史学科卒
大学院に学びながら、亀岡高校、洛北高校に勤務

その後、名古屋大学教授、京都大学教授を定年退官し、龍谷大学教授
京都大学名誉教授
北京大学・武漢大学・北京師範大学客座教授
専攻・中国中世(魏晋南北朝・隋唐)史
文学博士


中国史を史的唯物論の定式によって理解しようとする、戦後の中国史学の流れに反省と批判を加え、
共同体論的観点を導入して広汎な論争を引き起こすとともに、中国史学を活性化し新しい地平を拓く。


1994年より河合文化教育研究所主任研究員に就任。

1996年「内藤湖南研究会」を立ち上げ、
その研究成果は『内藤湖南の世界-アジア再生の思想』としてまとめられた。

また東アジア史や日中共同学術討論会-アジアの歴史と近代-」など
多くのシンポジウムにも積極的かつ精力的に臨んだ。

研究会の主宰や顧問もつとめ、若い人たちへの助言や激励を通じて次世代へ託す思いがたいへん強かった。

亡くなられる前の数年間は、特に現代中国の農民の維権(権利擁護)運動に注目され、
不法な政府の土地収用とそれに対する農民の抵抗を扱ったルポルタージュ作品
『失地農民調査』(王国林著、2009年)を共同翻訳し、
2010年文教研より『土地を奪われゆく農民たち中国農村における官民の闘い』という書名で出版。


2011年「中国現代農民維権活動覚書」(『研究論集』第8集)を発表、
2012年「共同研究:現代中国農民の維権(権利擁護)運動.中国学界の討論をめぐって」(中田和宏・田村俊郎両氏との共著『研究論集』第9集)を発表し、
シンポジウム「現代中国農民運動の意義─前近代史からの考察─」を開催した。
その報告は『研究論集』第10集に編まれている。

2013年6月7日逝去。


10月6日、京都において「谷川道雄先生をしのぶ会」がひらかれた。
その会では略年譜、主な著作リスト、最後のご発表(2013/4/15 主任研究員会議でのご発表)が参列者に配られた。→13谷川道雄先生をしのぶ会.pdf
また河合塾生全員に配布される文教研の栞』2013夏号・再版2014春号に「特集 谷川道雄先生」が編まれた。





◇◆ 著書 ◆◇

『中国中世社会と共同体』

 (北京と台北から中国語訳が出版)
 (一部がアメリカ・カリフォルニア大学より英訳出版)
『世界帝国の形成』
 (北京と台北から中国語訳が出版)
『隋唐帝国形成史論』
 (2004年秋上海から中国語訳が刊行)
『中国中世の探求』
他多数。


谷川道雄中国史論集 全二巻
(汲古書院刊 A5判上製 上巻480頁 下巻430頁 

定価  "各本体価格 12、000円+税

 


内容
・既刊の著書に収められなかった初期の論文
・『中国中世の探究』出版後に発表された論文を中心に採録


◆『隋唐帝国形成史論(増補)』『中国中世社会と共同体』
『中国中世の探究』の3冊とここに収録した論文を併せて読むことで、
先生の中国史研究の全体像が明らかになればと考えています。

戦後の中国史研究に大きな影響を与えた先生の研究の歩み、
また戦後の中国史研究の課題を振り返ることは
これからの魏晋南北朝隋唐史研究にとどまらず、
中国史研究全般にとって意味あることと思います。
                 (以上、刊行委員会の案内より) 

 

                         谷川道雄中国史論集 目次.pdf    



河合文化教育研究所から
『戦後日本の中国史論争』編著書
『中国史とは私たちにとって何か』(河合おんぱろす特別号)
『戦後日本から現代中国へ』(河合ブックレット)
『失地農民調査』(王国林著、2009年)共同翻訳
『土地を奪われゆく農民たち中国農村における官民の闘い』
『研究論集』第8集「中国現代農民維権活動覚書」
『研究論集』第9集「現代中国農民の維権(権利擁護)運動.中国学界の討論をめぐって」(中田和宏・田村俊郎両氏との共著)
『研究論集』第10集「現代中国農民運動の意義─前近代史からの考察─」(シンポジウムの記録)

 


◆◆ シンポジウム・講演会 ◆◆

東アジア国際学術シンポジウム 日中共同学術討論会「アジアの歴史と近代」第1回~第10回
東アジア国際学術シンポジウム  シンポジウム現代中国農民運動の意義─前近代史からの考察─
東アジア国際学術シンポジウム 日中学術討論会 魏晋南北朝隋唐時代の歴史的特質(2001)
東アジア国際学術シンポジウム 中・日・韓三国関係と東北アジアの平和的発展について(1997)
東アジア国際学術シンポジウム  東アジア史を問い直す(1995)
東アジア国際学術シンポジウム  日本学者研究中国史論著選訳出版慶祝学術討論会(1994)
戦後日本の中国史論争(1991)



 

◇◆ わたしが選んだこの一冊(2010~2013) ◆◇

・2010年 『代表的日本人』内村鑑三 著 (鈴木範久訳)
・2011年 『アイヌの物語世界』中川裕 著
・2012年 『後世への最大遺物 デンマルク国の話』内村鑑三 著
・2013年 『イエスの生涯』遠藤周作 著



◇◆ わたしの近況 ◆◇

(2012年 夏)中国農民に夢を託す
 

◇◇ 近 況 ◇◇

(2012年 夏)中国農民に夢を託す

  長年やってきた魏晋南北朝・隋唐史の研究をひと先ず棚上げにして、いま現代中国の勉強に熱中している。現代中国の動きは、歴史を目のあたりに見るようにダイナミックで緊迫感がある。
 30年来の市場経済導入政策で、中国は急速な経済発展を遂げ、「世界の工場」と言われるまでに成長した。いまや経済大国、さらには軍事大国への道をまっしぐらに走っている。

 その反面、その成長がもたらした負の現象もただならぬものがある。官僚の腐敗・汚職を初めとして、国民間の所得格差の拡大、環境汚染、食品公害、思想・行動に対するきびしい統制等々数え上げればきりがない。民衆の政府・党に対する不満・憎悪は年を追って社会内部に沈殿蓄積し、頻々として反政府騒擾事件を生み出す。インターネットによる汚職官僚の摘発と攻撃も、すさまじいものがある。
 中国には昔から「君は舟、民は水」のたとえがある。舟を載せて運ぶ水が一旦荒れ狂うと舟はひっくり返ってしまう。中国歴代の王朝革命の多くは、そこから起った。この言葉は現在の為政者たちもよく口にして戦々兢々としているが、もはや後戻りはできないようである。

 人口の半ばを越える農民も、貧困と地方官僚の不法な政策に苦しんでいる。私が注目するのは、その農民のなかに、法に保証された権利の侵害に抗議して、地方政府と対決して闘う集団が各地に生れていることである。彼らは維権農民(権利を守る農民)と言われているが、教育水準もさして高くない彼らが自ら法律を学習して、官と渡り合う姿は、従来の歴史には見られなかった新しい現象である。これまでの農民は官の不法を忍従するか、それが限度に達して暴動に走るか、二つの道しかなかった。しかし今や維権運動という、第三の道が開けてきたのである。それは中国農民がようやく近代的公民として成長してきたことを示すものではなかろうか。

 ヨーロッパや日本のような先進国は、農村を犠牲にすることで工業的近代化を遂げてきた(イギリスのエンクロージャ、日本の戦後)。今日の中国も基本的に同じコースをたどっている。かの横暴な土地収用は、その如実な表現である。しかしもし維権運動が中核となって官僚の干渉を排除し、真に農民の手による郷村共同体が建設できる。

 ならば、中国の近代化はおのずから異なった世界を創り出さないだろうか。そうなれば、「近代化即工業化」(ライシャワー)という従来の観念は修正されなければならなくなる。

 これは私一個人の夢想であって、実情における農民の前途はたとえようもなくきびしい。しかし昨年広東省の鳥坎(ウーカン)村で起った事件は、中国農民のたくましい力を示してくれた。それは村の幹部が村民の共有地を勝手に企業に売り飛ばしたことに端を発し、村民たちが村にバリケードを作って政府と対峙して戦った事件である。この過程で彼らは自主的に自治組織を作り、官の干渉のない村を実現した。広東省もこれを承認せざるを得なくなったのだが、完全な村民自治の村の実現は画期的だとして、全国に多大な影響を与えたのである。ちなみに言えば、この闘争では、出稼ぎに行っていた青年農民工たちが目ざましい働きをした。IT技術を駆使して情況を国の内外に伝えたため、海外のマスコミにも大々的に取り上げられ、戦いを有利にしたのだった。

 中国農民の自己に目覚めてゆく姿は、私のような老齢、身障の者にも勇気を与えてくれる。そのパワーに触発されて、昨年、今年と別記のような論文を発表した。私の中国農民オタクは当分続きそうである。